マンスリーコラム

多様な視点を持ち、しなやかでありたい

永井 文子(ながいふみこ)

大学フランス文学科を卒業後、人材情報関連企業、音楽事務所、専業主婦などの経験を経て、現在は名古屋市内区役所民生子ども課にて母子・父子自立支援員として、年間のべ1000件以上のひとり親家庭の相談を受ける。その傍らで、縁あって知り合った仲間と一般社団法人草の根ささえあいプロジェクトを立ち上げ、生活困窮者の直接支援、支援団体に対する中間支援、イベントや研修会、ワークショップ開催、調査事業等の活動を行っている。

今年3月末で区役所を退職し、4月からは法人が名古屋市から受託している名古屋市子ども・若者総合相談センターにて勤務予定。

【資格】

国家資格キャリアコンサルタント

米国CCE.Inc認定GCDF-JAPANキャリアカウンセラー

精神保健福祉士

多様な視点を持ち、しなやかでありたい

■キャリアコンサルタントとしての視点とソーシャルワーカーとしての視点■

  私は現在、名古屋市内の福祉事務所において、ひとり親家庭のお父さん、お母さん、お子さん達やひとり親家庭予備軍の方達の相談業務を行っています。持ち込まれる相談事は多岐に渡り、経済的なこと、お母さんやお子さんの資格取得や就職について、お子さんの教育や不登校、引きこもりなどの問題、お母さん自身の身体や精神の病気、離婚にまつわる養育費や法律的なこと、家族関係、日常の生活のお困りごとなどなど。傾聴だけではなく、直接フォーマル、インフォーマルな社会資源に結び付け、しかもクライアントによっては、長期に渡って継続した支援を行っていく業務なので、常に様々な知識やつながりの更新が必要となります。

  それと並行してボランタリーに中核メンバーとして運営に関わっているのが、プロフィールでもご紹介している法人なのですが、自分の中では、あまり境目がなく、法人で出会う様々な人的資源やノウハウが、本業でも大いに役立ち、また本業の知識や経験が法人の方でも役に立ち、相互補完している状況です。

  キャリアコンサルタントとしての視点とソーシャルワーカーとしての視点、どちらも併せ持っていることが、私の仕事をよりダイナミックにしてくれていると感じます。


■目の前のクライアントの背景に思いを馳せること■

  このサイトを訪れるキャリアコンサルタントの皆さんが対象とされているのは、学生、会社員の方など、恐らく困窮というほどではなく、これからの人生設計をどうしようかと悩んでいる"普通"のキャリアの方々が大半ではないかと思います。

  それと比較すると、私が支援を行っている対象者の大半は、もっと生活の根源の問題の解決を含めたキャリア支援が必要な方達です。

  マズローの5段階の欲求で言えば、前者は、第3階層以上の社会的欲求、尊厳欲求、自己実現欲求の段階の方。片や後者は、第1階層の生きていくための基本的・本能的な欲求や、第2階層の安全欲求が満たされていない方が少なくありません。これらの方たちは、とかく自己責任を問われがちです。豊かになるための努力をしてこなかったから、今そんな状況になっているのだ。それが嫌なら、もっと頑張ればよいのに、と。

  しかしここで考えて頂きたいのは、この世の中に、不自由や不幸を望んで生まれてきた者など、ひとりとしていないということです。今現在、経済的な不安がなく、生活の安全も脅かされないのは、誤解を恐れず言えば、"幸運にも"そのような心配事とは無縁な環境に恵まれているに過ぎず、大方のところ本人の実力ではありません。生まれ育った環境で、自分では選択の余地のない人生を送らざるを得ない方たち、見過ごされてきた障害の為にどうしようもない生きづらさを抱えている方たち、幾度となく打ちのめされて、その挙句にやる気を失うような状況に追い込まれてしまった方たちがいること、又は不適切なリファーをされてたらい回しにされ、しまいには他に対する不信感が募り、誰かに頼る気力を失ってしまっている方たちがいること、そんな方たちが今に至る背景にまで想いを馳せてみて頂きたいのです。そしてもっと大事なことは、支援者が「どうしようもない」と、あきらめないことです。どんなに困難と思われる状況でも、クライアントの可能性を信じて、一緒に解決の糸口を考えることが重要なのです。


■多様な関わりを持つ中で学び続ける■

  キャリアコンサルタントは、多様な方々と関わる可能性のある仕事です。自分の専門性だけでは解決できないことが発生してくることが多々あります。医療的なケアが必要だったり、福祉サービスに結び付けることで就労の継続が可能になったり、時には制度ではカバーし切れずにインフォーマルな助けが必要なケースもあります。その時に的確にアセスメントを行い、どこに連携を求めるのか、その判断の基盤になる知識と価値感を持っていることが必要です。相談先やリファー先の引き出しは多ければ多いほど、より適切な支援に結び付けることができ、クライアントをたらい回しにしてかえって孤立させてしまうようなことはなくなります。

  草の根ささえあいプロジェクトの活動のひとつに「インフォーマルネットワークなごや」というものがあります。これは、多分野の支援者が集まり、ワークショップや勉強会をしたり、時にはケース検討をしたりという時間を共有する中で、どこどこの団体のこんな支援が得意な〇〇さんという形で、いざという時に頼りになる顔の見えるネットワークを構築していくことを目的としています。また、官民や専門性を超えた地域の方や企業の方などに参加して頂くことで、多様なネットワークの可能性を体感できるオリジナルのワークショップも開催しています。こうした活動の積み重ねが、私の大きな財産になっています。

  更に、アンテナの片隅に引っ掛かった、いつもと少し違うジャンルの人たちが集まる場にも、可能な限り参加するようにしています。3年前に通信制の大学に編入学し、精神保健福祉を学んで資格を取得したことも、日々の実践の中で必要と感じてのことです。クライアントからの学びも多々あります。助ける側と助けられる側という一方的な関係ではなく、むしろこちらの方が気づきを頂き、救われたと感じる場面も少なからずあります。サポートをしていた方が、生き生きとした表情に変化していく姿を見る経験は、何ものにも代え難いモチベーションになっています。


  30年ほど前の大学時代には、今とはまったく関係のないフランス文学科の学生だった私が、"人生の正午"を過ぎた頃から、導かれるように今の仕事と活動につながってきていることは、神様からの贈り物のようにすら感じます。多くのキャリアコンサルタントの皆さんが"プランド・ハプンスタンス"を体現されているように、私もまた例外ではありません。

  これからも、自分自身が多様でしなやかな生き方ができるよう、わくわくすることを見つけながら、人生の最期まで、学び続け、働いていたいと思っています。


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コラムの感想等はこちらまで (協議会 編集担当)
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